この記事を見ているということは、博士の無い内定(通称: NTT)状態もしくは心配をしている博士・修士の学生さんだと思います。
そんな私も数年前は、「企業で創薬する!」という考えのもとで就活を行い、無い内定状態になった博士課程の学生でした。無い内定経験後は、ポスドクを経て、現在は製薬企業にて研究開発に従事しています。
本記事では、「無い内定となり、メンタルが落ち込んでしまった現状から、どうやって立ち直るか?」についてお伝えしたいと思います。
自分の人生に多大なる影響を与えた書籍や動画なども載せているので、そちらも参考にしながら、自分の気持ちを整理してみてください。
きっと、あなたに力を与える存在になってくれますよ。
無い内定時のメンタル面の対処法
身近な人に自分が困っていることを伝える
自分のことだから、あまり人に頼るのは申し訳ないんです…。
この回答は、まさに昔の自分が思っていたことです。「自分の力で職を手に入れなければいけない!」と思い、就活を行なっていました。また、無い内定の状態になった時も、「自分でなんとかしなければいけない。」と思っていました。
結局これは、「自分がうまくいっていないことを他人に知られると恥ずかしい…」という世間体を気にしての行動だったと思います。「人から良いように見られたい!」という見栄ばかり気にして、自分の弱さをさらけ出せない自分がいました。
ここで、人に頼ることの大切さを感じたエピソードをお話しします。
前所属の研究室の先輩にお会いした時に、「就職先なくて困ってるんですよねー」と雑談の中でお話ししました。
すると先輩が「〇〇先生(前研究室の教授)に相談してみたら?俺が連絡しといたるわ!」と話が進みました。
〇〇教授に就職先が無いことを相談すると、助教やポスドクの案内をいただきました。
そして、紹介していただいた研究室の教授との面談や助教の公募に書類を提出しました。
企業研究者を目標にしていたので、アカデミアの研究者は考えていませんでした。
無い内定の時は、自分は研究者としてダメという烙印を押されたと自暴自棄になっていました。
しかし、面談などを通じて「自分は研究の世界にいて良いんだ」という感覚が戻ってきました。
また、企業就活とは違った角度で、必要書類(履歴書、研究歴)を用意する中で、自分がしたいことが見えてきました。
その後、上記とは別の先輩の繋がりから、「うちの会社を受けてみないか?」というお言葉をいただきました。推薦ではないので、他の志望者と同様の面接を経て、晴れて内定をいただくことができました。現在はその企業に入社し、研究開発職として働いています。
このエピソードからわかるように、
- 人に頼ることで、自分では思いつかない提案に出会えることがある。
- 自ら助けを求めなければ、誰も助けてくれない。逆に、助けを求めれば救いの手を差し伸べてくれる人が現れる。
ということを学びました。
下記のような博士課程に関連した人であれば、あなたの悩みについて肌感覚でわかっていただけると思います。悩んでいるのであれば、自分の身近な人に頼ってみましょう。
- 所属研究室の教授
- 隣の研究室の助教
- 企業研究者の先輩
- 同じ研究科・学会の仲間
僕、人に頼るのが、苦手なんだよね…。
その気持ちわかります。
人への頼り方については、下記の参考図書を参考にしてみてください。
本項目の参考図書①: 哲学者と悩める青年の対話形式でアドラー心理学について教えてくれる累計発行部数200万部越えの大ベストセラー本。「あなたの不幸はあなたが選んでいるものだ」のように、厳しくも自分本位の生き方を教えてくれる一冊です。
本項目の参考図書②: なぜ人に頼るのが難しいのかを解説し、どうやったら人から助けてもらえるかが書かれた一冊。困った時こそ、人に頼りましょう。
自分が何が好きなのかをより明確に言語化する
研究することが好き!
研究で何かを成し遂げることが好きなのか、研究を通して試行錯誤することが好きなのか、研究の時に新しい知識が得られることが好きなのか、好きには色々な種類があります。あなたの研究好きは、掘り下げるとどこに行き着きますか?
ワンキャリア取締役の北野唯我さんは『転職の思考法』という本の中で以下のように述べています。
人間には「何をするか」に重きをおくto do型の人間と、「どんな人でありたいか、どんな状態でありたいか」を重視するbeing型の人間がいる。
99パーセントの人間はbeing型である。だから、「心からやりたいこと」がなくても、悲観する必要はまったくない。
このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む 転職の思考法, 北野唯我, ダイヤモンド社, 2018
to do 型と being 型の研究者の一例について以下のようなツイートをしました。
企業研究者希望の博士課程の学生の場合、being 型の方が多いのでは無いでしょうか?
そうであるならば、研究職以外の職を考えるという選択肢も現れてきます。
ほんの一例ですが、以下のような考えもできるのではないでしょうか?
- 研究の話をするのが好き・新しい機器好き→技術営業
- 論文を読んで、新しい知識を増やすのが好き→弁理士
- モノづくりが好きで色々な技術に触れたい→ベンチャーキャピタリスト
自分が何を好きとしているのか(≒どんな状態であれば幸せなのか)を明確にすることは、研究以外の選択肢を自分の中に持つことにつながると思います。
本項目の参考文献①: 博士課程の後に、研究職以外にも色々な職に就く人がいることを認識することから始めてみませんか?
本項目の参考図書②: Being型の人間にとって「マーケットバリューがなぜ重要なのか」など、働くとはどんなことかを教えてくれる一冊。
自分の専門分野について、もう一度見つめ直す
いやいや、自分の専門分野はわかっていますよ…。
博士課程まで進んでいるのであれば、専門分野のことはよくご存知だと思います。
ここでお話ししたいのは、その専門分野をどのように活かすのか?という話です。
例えば、あなたが腫瘍免疫学の研究をしていたとします。
腫瘍免疫学に立脚した創薬研究を行なっている企業に応募しよう!では、競合が多過ぎます。
そこで、転職業界では有名な moto さんの書籍である転職と副業のかけ算の『軸ずらし転職』の考え方が応用できると思います。
腫瘍免疫学の研究を行なってきたから、がん細胞を叩く免疫細胞のことに詳しい。
では、研究領域を腫瘍免疫学から、再生医療にこの知識や経験は生かせないだろうか?と考えます(例1)。
例えば、移植した細胞が免疫細胞に攻撃されて、移植した細胞が本来の能力を発揮できていない、という問題点が企業が抱えていると仮説を立てます。
その際、移植する細胞に免疫チェックポイント分子(PD-1, PD-L1など)を高発現する細胞にしたら、宿主の免疫系から排除され難くなる、という提案ができるかもしれません。
他にも、ゲノム編集を用いて発生の研究を行なっていたとしたら、ゲノム編集でがんをやっつける方法について提案できるかもしれません (例2)。
再生医療の王道といえば、分化誘導方法や移植細胞の治療メカニズム解析だと思います。一方で、その分野の研究者と異なる視点で、企業が抱える問題点に対して仮説を立て、解決法を提案することも、専門性の上手い活かし方だと思います。
本項目の参考図書(転職と副業に関する本ですが、本書の「軸ずらし転職」の考え方は、博士の専門性においても同じ考え方ができると思います)。
心に栄養を与えてあげましょう
無い内定状態で何もかもネガティブに考えがちな状態では、思考力も行動力も低下しています。まずは、心を元気な状態にすることから始めましょう。
そこで、落ち込んでいる時に私を勇気づけてくれた、植松さんの TEDxSapporo の動画をご覧になってください。植松さんの優しげな声とそっと背中を押してくれる言葉が人々に響き、500万回以上視聴されています。
最近、”不安な時代に踏み出すための「だったらこうしてみたら?」”という書籍も出版されましたので、私も読んでみました。
夢、仕事、お金の不安や人の目が気になって一歩が踏み出せない読者に対して、植松さんが「だったら、こうしてみたら?」と具体的なアドバイスをするという構成になっています。
「だったら、こうしてみたら?」思考をインプットしてくれる一冊です。
まとめ
博士課程まできて、職が無い辛さは相当なものだと思います。しかし、この経験は新たな道を切り開くチャンスとも捉えることができると思います。
今回の記事では、多くの書籍や動画をご紹介してきました。私自身、書籍や動画から多くのことを学び、勇気をもらってきました。
困った時こそ、先人の知恵が凝縮された書籍・動画があなたの悩みを解決する一助になるでしょう!
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