研究遂行経費を申請しないと毎年11万円以上も損する!?理由と対策

学振
こんな方に読んでほしい!
  • 学振DC1, DC2の『研究遂行経費』を申請しようか悩んでいる学生
  • 学振からもらえる給料について知りたい学振提出・博士進学予備軍の学生
  • 学振研究員の採用者の方であれば、採用おめでとうございます!

    採用率20%という狭き門をくぐり抜けたことに敬意を評します。

    博士課程中の生活費の確保は、生活の質と心の安定を保つ上で非常に重要です。

    私自身も学振研究員の採用によって生活基盤を整備できたので、『採用』のありがたみが分かります。

    また、「学振で給料っていくらもらえるの?」という学振のお金の詳細を知りたい方もぜひ本記事を読んでください。

    この機会に、学振の制度を知り、博士課程のお金について考えていただければと思います。

    本記事では、研究遂行経費を申請しないと年間で11万円以上も損してしまう理由と損しないための方法について解説していきます。

    学術振興会特別研究員 DC1,DC2 (学振DC) とは?

    まずは学振の定義からおさらいしておきます。

    優れた若手研究者に、その研究生活の初期において、自由な発想のもとに主体的に研究課題等を選びながら研究に専念する機会を与えることは、我が国の学術研究の将来を担う創造性に富んだ研究者を育成する上で極めて重要なことです。

    このため、独立行政法人日本学術振興会(以下「本会」という。)は、我が国の大学院博士課程在学者で、優れた研究能力を有し、当該大学で研究に専念することを希望する者を「特別研究員-DC」に採用し、研究奨励金を支給します。

    日本学術振興会特別研究員-DC 令和4年度(2022年度)採用分募集要項 1.趣旨

    つまり、日本の未来の研究を支える研究者の卵に研究に専念してもらうために、お金を支給しますよという制度だと解釈できます。

    毎年5月ごろに申請書を提出し、申請書提出者のうち約20%が特別研究員として採用されます (参考: 特別研究員採用状況について)。

    学振 (DC1, DC2) に採択された場合、

    1. 月20万円の研究奨励金 (≒生活費, 自分の銀行口座に入金される)
    2. 年間約80万円の特別研究員奨励費 (所属研究機関で管理され、試薬などを購入する研究費)

    をいただけます。

    特別研究員奨励費の金額は、採択年度・分野によって異なります。自分はどのくらいの研究費がもらえるかは科学研究費助成事業データベース (KAKEN)で調べてみましょう。

    申請書を提出前の学生さんは過去記事もご覧いただくと学振への理解が深まりますよ。

    研究奨励金とは?

    研究奨励金は額面20万円の給料と疑似的に考えることができます。

    なぜ”疑似的な”という言葉を使ったかというと、日本学術振興会と特別研究員には雇用関係がないので、厳密には給料ではないからです。

    しかし、税法上給与所得とみなされ課税の対象となります。

    したがって、各自で住民税の納税を支払う必要があり、国民健康保険・国民年金保険に加入・納付する手続を自分でしなければなりません。

    手取り額 (自分が自由に使える金額) は以下のような計算式で求めることができます。

    研究遂行経費を申請するメリット

    使わないと損!学振研究員が使える節税術

    国などに持っていかれる前に、研究奨励金20万円をできるだけ自分のため使いたい!

    そのための方法として、研究奨励金のうち3割を研究遂行経費として使用することが挙げられます。

    なぜ研究奨励金のうち3割を研究遂行経費として使用することが節税に通じるのか?

    特別研究員からの申告により、研究奨励金のうち生活に係る経費ではなく「日本学術振興会特別研究員申請書」に記載された研究課題及び研究計画を遂行するために要する経費を、研究奨励金の 3 割相当額を上限に「研究遂行経費」として所得税・住民税の課税対象より除外することができます。

    遵守事項および諸手続の手引(令和3年度版)Ⅱ-2.研究遂行経費

    つまり、下記の図のようなイメージです。

    研究遂行経費に相当する3割 (6万円/月) 分が非課税になることで、国民健康保険・住民税・所得税の納付額が減少します!

    採用時の書類の中にある『研究遂行経費に関する調書』で研究遂行経費の取扱いを希望すれば、採用時に行う手続きは完了です。

    「私は、研究遂行経費の取扱いを希望します。」に◯をして提出で、申請は終了です。

    そして、4月に前年度の『研究遂行経費の支出報告書<様式5-5>』を提出することで、一連の手続きは終了です。

    毎年4月に前年度の支出を報告します。

    実際に、研究遂行経費の支出報告書を未提出の場合提出した場合の税金・社会保険料の合計額の差は 40,442+45,118+25,080=110,640円/年 になります。

    研究遂行費を申請することで年間11万円以上の税金・保険料を支払わなくて済みます

    つまり、手取り額が9,200円/月増えることを意味します。

    以下の項目で具体的な内訳を見てみましょう。

    • 扶養家族がいない前提で計算をしています。
    • 計算を簡易的にするために細かな控除は除いています。
    • 居住する地域によって、納付額や社会保険料が異なります。

    国民健康保険料

    参考資料: 令和3年度の大阪市国民健康保険料について

    未提出の場合: 169,481円/年
    提出した場合: 129,039円/年

    年間で40,442円の差が生じます。

    国民年金保険料

    国民年金の1カ月当たりの保険料は、収入に関係なく、一律の金額 (16,610円, 令和3年度) です。

    まとめて前払い (前納) すると、割引が適用されるので、自分の貯金残高と相談の上、お支払いください。

    令和3年度は、1カ月当たりの保険料は16,610円です。

    参考資料: 国民年金前納割引制度(口座振替 前納)

    未提出の場合: 195,140円/年
    提出した場合: 195,140円/年

    差は生まれません。

    住民税

    参考資料: 税額の計算

    未提出の場合: 95,800円/年
    提出した場合: 50,682円/年

    年間で45,118円の差が生まれてきます。

    所得税

    参考資料: 日本学術振興会特別研究員 遵守事項および諸手続の手引, Ⅱ-3.所得税の源泉徴収

    未提出の場合: 57,120円/年
    提出した場合: 32,040円/年

    年間で25,080円の差が生まれてきます。

    研究遂行経費の支出報告書を提出することで、40,442+45,118+25,080=110,640円/年 になります。

    具体的に何が研究遂行経費になるの?

    過去に提出した実例を大公開!

    6万円/月を研究に関係する費用に当てることができるのでしょうか?

    研究遂行経費として認められている経費として、

    1. 学会関係経費
    2. 各種研究集会等への参加費
    3. 学術調査に係る経費
    4. 自宅での研究に必要な経費
    5. 所属・関連機関への交通費

    が挙げられています。

    実際に私が学振に提出した書類がこちらになります。

    (注)令和3年度版(令和3年4月1日~施行)(SPD・PD・DC2・DC1・RPD)とは様式が異なることをご了承ください。

    具体的な内訳として、

    1. 自宅用のPCやディスプレイの購入。
    2. 生物物理若手、生化若手のような学部生〜ポスドクを対象にした若手の会への参加費・交通費。
    3. 実験医学の定期購入。研究者同士の情報交換会への参加。
    4. 通信費。論文執筆や文章術の書籍代。

    などが挙げられます。

    経費として認められない費用を計上してしまった場合はどうなるの?

    研究遂行経費に認識違いで間違ってしまったらどうしよう…と心配になる方もいるかもしれません。

    心配の方は、学振に直接問い合わせることが1番の解決策になるでしょう。

    もし間違って経費になり得ない費用を計上してしまった場合、間違っていることを指摘されてから訂正すればOKでした!

    上記のメールは、学振の担当者さんから頂いたメールになります。

    大学構内の駐車料金を間違って研究遂行費に加えてしまったことがありました。その際、計上できない費用だとメールをいただき、指摘を受けた事項を訂正して、それで終わりました。

    嘘や悪意のある経費の申請はいけませんが、人間なので間違いは起こりうるので、間違った時点で対処すれば問題ないでしょう!

    研究遂行経費申請のデメリット

    研究遂行経費の支出報告書を提出しなければいけない

    毎年4月に、前年度に支出した経費を『研究遂行経費の支出報告書』に記入して提出しなければいけません。

    採用後の各種手続き、様式集

    提出直前になって、レシート集めや記入で焦らないように日頃からExcel を用いて支出簿を作っておく必要があります。

    記帳、集計、レシートを保管という手間が増えることがデメリットと言えます。

    一方で、自分の支出をコントロールする習慣が身に付くという点でメリットにもなり得ると思います。

    5年間、レシートの保管が求められる

    本会から計上した支出に関する領収書等の提出を求めることがありますので、計上した支出に関する領収書等は5年間保管してください。

    採用後の各種手続き、様式集、5-5、(注)⑨

    研究遂行経費として購入した商品のレシートを保管しておく手間がかかります。

    それも5年間という長期で…。

    私も1年間分のレシートをA4封筒に入れて、それを3袋保管しています。

    引越しの際に実家に送り、実家の押入れに眠っています。

    研究遂行経費を使い切れなかった場合、追徴課税の振込が必要

    学振採択者
    学振採択者

    研究遂行経費が3割に満たなかったときはどうなるの?

    かだ
    かだ

    3割に満たない部分が課税の対象になり、追徴課税を振り込む必要があります。

    1年間の研究奨励額が 240万円 (20万円×12 ヶ月) なので、その3割の 72万円が研究遂行経費として使用できる金額となります。

    例えば、1年間で 60万円分を研究遂行費として使用した場合、この 60万円には税金は発生しません。

    一方、72万円-60万円=12万円に対して税金が発生します。

    12万円×税率 10.21%=12,252円の税金を日本学術振興会の口座に入金する必要があります。

    下記の画像は私が実際受け取った追徴課税のお知らせです (金額などは黒塗りにしています)。

    このように、研究遂行経費として3割使用できなかったとしても、後から税金を振り込めば問題ありません。

    税金関係は指摘されてから真摯に対応すれば問題は発生しないと考えられます。

    余計なものを買ってしまう理由を与えてしまう

    1年間で72万円を研究関連のことに使わないといけない!

    じゃあ、最新の Macbook Pro をフルスペックで買おう!

    これは過去の自分です…笑。

    「72万円を使い切らなければいけないと損!」と思ってしまい、余分なお金を使用してしまいました。

    3割のうちの一部分でも研究遂行経費として支出しているのであれば、得しています。使い切らなければいけないと思う必要はありません。

    しかし、お金があるからこそ、思い切った研究の効率向上に向けた投資が行えるという面もあります。

    経験に投資するという意味でも、大きな買い物をしてみるというのもありだと思います。

    まとめ

    研究遂行費を申請することで年間11万円以上の税金・保険料を支払わなくて済むことについて解説しました。

    できるだけ税金や社会保険料に取られる金額を減らし、毎月の20万円を自分の研究や成長に活かしてください!

    お金について学び、そして少しでもお金の心配を減らすことができれば、より積極的な博士ライフが送れると思います。

    参考文献

    お金が無かった博士時代があるからこそ、お金は “選択の自由” を与えてくれる礎だと実感できます。

    65万部も売れている大ベストセラー本当の自由を手に入れるお金の大学に書かれている内容は、知らないと損するお金の教養を身につけるために絶好の教材です。

    この本のお金の基礎知識があったからこそ、本記事が書けたと言っても過言ではありません。

    ぜひ本書をお手に取ってみてはいかがでしょうか?


    学振申請書の提出前の論文投稿を考えている学生さんには論文投稿の流れについて解説した記事が参考になると思うので、ぜひ一度ご覧ください。

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