博士課程に進みたいけど、就職活動をしている修士の学生さんへ

キャリア
学生
学生

修士卒業で就職するか、博士課程に進学するか悩んでいます。

この記事を読んでいるあなたは、非常に悩んでいると思います。

博士課程に進むのか否かという悩みに対して、人それぞれの意見があると思います。

先輩A
先輩A

進学したい気持ちがあれば、進学した方がいいよ!

先輩B
先輩B

悩むぐらいなら進学しない方がマシだ!

私も「博士課程に進みたい!けど、博士課程に進むのって大丈夫なのかな?」と悩みながら、修士課程の時に就職活動を行なっていたので、悩みが非常にわかります(私の場合は悩んだ結果、博士課程に進学しました)。

上記のツイートにあるように、博士課程に何がなんでも進んだ方が良い!という意見は持っていません。しかし、博士課程に進学したいという気持ちがあるのであれば、その想いを大切にしてほしいと私は考えています。

昔の自分
昔の自分

博士課程に進んで何が得られるの?

どんなことに苦労を感じるんだろうか?

自分が上記のような悩みを持ったからこそ、本記事では “博士に進んで良かった点”と “博士に進んで辛かった点” について私の考えをお伝えします。

本記事を、”博士課程に進む・進まない” の判断の一つにしていただけたらと思います。

本記事を読む前提知識の共有

将来目指す形(例: 企業なのか、アカデミアなのか。研究職なのか、非研究職なのか。)によっても、博士課程に対する考え方がが変わってきます。

初めに、私の前提を共有しておきます。

  • (課程博士に進学前)メーカーにて研究職として創薬を行いたいと考え、進学を決意
  • (課程博士の修了後)ポスドクを経験し、今はメーカーに勤務

博士の学位を取得する方法も、いろいろあります。

  • 課程博士: 博士課程に進学し、研究に専念(平日5日間 +α)し、学位の取得を目指す(本記事で対象とする博士)
  • 社会人博士: 企業で働きながら、平日の夜や休日に行なった研究成果(就業時間外の成果)で、学位取得を目指す。
  • 論文博士: 企業内や共同研究先の大学での研究成果(就業時間内の成果)で学位取得を目指す。

なお、所属する大学や学部によって、学位取得の色々な形式があるので、全てが上記の定義に収まらないことをご了承ください。

それでは、いきましょう!

博士課程に進んでよかったこと3選

博士の学位を手に入れることができた

かだ
かだ

博士課程でしか手に入れることができないもの…

それは博士の学位です!!

学生
学生

当たり前じゃないですか!?

当たり前ですが、博士課程の期間(3-4年間)は研究に多くの時間を割き、学位を取得するまでの過程と成果が博士課程での特別な経験と言えます。

博士の学位は「足の裏の米粒(取らないと気持ち悪いけど、取ったところで食べられない)」と揶揄されるように、博士の学位を手に入れても、特に何も起こりません。研究者としての運転免許を得た段階であり、スタートラインに立ったに過ぎません。

しかし、学位の取得が、日本だけでなく、海外の大学や研究機関で研究を行うパスポートになりうることは間違いありません。

研究活動拠点を日本以外の海外にも目を向けることができたという点で、学位取得は重要な意味を持つと私は考えています。

学生
学生

研究職として企業に入ってから、企業の成果で論文博士をとればいいんじゃないですか?

論文博士でも博士の学位は得られますが、年々論文博士を取るのが難しくなってきていると聞きますし。また、企業での成果を論文にして学位を取得するためには、実力だけでなく、社内での順番や所属部署や上司の方針など、運の要素が大きいです。

博士課程に進学して絶対に博士の学位を取得できる保証はありません。しかし、企業に就職してから学位取得を目指す不確定要素の多いルートより、修士課程から博士課程に直接進学して学位取得を目指すルートの方が、学位取得の確率が高いと考え、私は進学を決意しました。

自分の研究を世界に発信できた

かだ
かだ

自分の名前をググると、自分の論文が出てくるって嬉しくないですか?

多くの博士課程の学位取得要件に、筆頭著者論文の国際誌への投稿があったりします。

研究は「Stand on the shoulders of giants」と表現されるように、これまでの研究成果を元に更なる研究を重ねる。論文を出すということは、自分もその巨人の一部として人類の叡智に貢献できることを指します。

論文投稿のプロセスを自分で経験することで、「なんで急にこの Discussion を始めたの?という疑問に対して、Reviwer からのコメントを反映したんかな?」のような論文の構成の裏側にまで想いを馳せることが可能になります。

修士課程の学生であっても国際誌に筆頭著者として論文を出すことも可能だと思います。しかし、これは学生の実力も大切ですが、研究室の環境が大きく関与していると思います。

例えば、学振を通すために、修士の段階で一報論文を出す仕組みがあるラボ。学生が実験をして、助教が論文を書くというスタイルのラボ。これまでの先輩の蓄積があったテーマを手に入れることができたなど。

論文を修士のうちに出せるラボを選び出すことも実力です!しかし、全ての人がそのような研究室を選べるわけではないので、博士課程での論文が初めての筆頭著者論文の方が多いと思います(特にバイオ系のような一報に時間をかける分野の場合)。

論文を出す流れについては、過去の記事をご参考にしてください。

じっくり腰を据えて、研究テーマに打ち込むことができた

学士や修士では、研究テーマにかけることができる期間は、院試や就活などを考慮すれば、研究ができる期間は実質1~2年と非常に短期間になってしまいます。

一方、博士課程であれば、3~4年間という期間を研究に当てることができます。実験手技を覚えたり、トライアンドエラーを重ねデータを出していくには、時間がかかってしまうと思います。

また、博士課程の場合であれば、出席必須のイベントといえば、研究室全体の進捗報告会・ジャーナルクラブ、研究グループでのディスカッションだと思います。それと、定期・不定期に開催される研究科のセミナーへの出席だと思います。

また、後輩の指導をしたり、研究室の雑務をこなしたりすることが求められるかもしれません。しかし、ポスドクや助教のように上に行けば行くほど、下の人から頼られ、自分の時間を確保することが難しくなります。

博士課程は、自分の研究に専念できる貴重な期間だと思います。

博士課程に進んで、辛かったこと3選

研究がうまくいかない時に感じた不安

研究をするために、博士課程に進んだので、やはり研究の良し悪しが自分の精神状態に影響を与えました。研究成果と自分の価値には関係はないと思いますが、どうしても研究成果の有無で、自分の研究能力や自分の研究者としての価値に置き換えていました。

今思うことは、研究成果が出ない時期にもがいた経験(新しく覚えた実験手技やこれまで読んできた論文)が一気に花開くこともあるということです。私自身が国際誌に投稿したデータの8割ほどが、博士課程の最終年度に出したデータでした。紆余曲折を経て、研究成果に結びつくことがあるので、自分の研究を信じてほしいと思います。

周りとの経済的格差

学振 DC1 に採択されていたので、給料をいただいていました。しかし、周りの修士で就職した同期と比べると圧倒的にお金がないという印象でした。

結婚などの将来を考えると、不安になることをもありました。

しかし、お金がなくても楽しく生活できる術を手に入れたと思います。論文を読んだり、新しい技術について twitter で知ったりすることで、自分の知識欲を満たすことができています。お金がないというデメリットから、お金を使わずに幸せを感じられるようになったというメリットが生じました。

就職活動がうまく行かずに一時期、無い内定になった

これは、人それぞれだと思います。

メーカーの研究職を数十社受けましたが、内定はいただけませんでした。その時、メーカーで創薬研究をするという目標の元、博士課程に進んだのに、自分のこれまでの努力はなんだったのか?と、完全に自分に自信を失ってしまいました。

しかし、内定がないという挫折を経験して、もう一度自分の人生について考え直すことができました。落ち込んだ時期もありますが、縁があって、ポスドクとして働き、メーカーに就職をすることができました。

進学に不安を抱えているのであれば、自分にとっての恐怖が何かを書き出してみませんか?
全ての不安が消えるとは言えませんが、心が軽くなりますよ。

この “恐怖の明確化” に関しては、Tim Ferriss さんの TED Talk “Why you should define your fears instead of your goals” (動画の5:53から具体的な方法について語られています)をご覧ください。

まとめ

博士課程への進学に悩みは付き物だと思います。

しかし、生存者バイアスかもしれませんが、博士課程での経験(仮説通りにならなかった実験や就職活動がうまく行かなかった経験、論文投稿まで漕ぎ着けるまでの苦労など)は自分にとって必要な経験だった思います。

一度、就職して、博士を取りに大学に戻るケースもあると思います。さまざまな事情があることは承知の上ですが、「鉄は熱いうちに打て」ということわざがあるように、「博士に進むんだ!」という想いがあるのであれば、その想いに素直になって、行動に移していいと私は思います。

一方、進学せずに就職をするという決断も、研究したい時に博士課程に進学しようと決めること(退職D進って言葉も聞きますもんね!)も、重要な決断の一つです。

最後に言えることは、博士課程への進学を考える機会に、”人生について考え抜き、自分が決断を下す” という行為に価値があると私は思います。自分のこれまでを振り返り、これからを考え、自分なりの今できるベストな選択をしてください!!

参考図書

こちらでは、研究者や博士課程に進んだ先輩方の物語について書かれた書籍を紹介しています。「自分も頑張ろう!」と勇気をもらえる書籍を選んでみたので、興味のある書籍を手に取ってみてはいかがでしょうか?

博士課程を修了後のアカデミアでの研究職以外の可能性について知ることができます。博士課程後の広がりについて知ることができるので、自分の固定観点に囚われない見方を得られる一冊です。


京セラの稲盛さんと京大 iPS 研の山中先生の対談形式の書籍です。山中先生の iPS 細胞に至る山あり谷ありの道のりは、研究に悩む博士課程の学生に元気を与えてくれます。


ノーベル生理学医学賞を受賞した利根川進先生の研究物語が詳細に書かれた書籍です。バイオ系の研究者であれば、胸躍る内容で「研究をしよう!」と自然と思わせてくれる一冊です。

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