論文の投稿から掲載までの流れをご紹介します

研究力

先日、筆頭著者論文が某オープンアクセス国際誌に掲載されました。

4年間かけた研究が論文という形で世の中に出たので、論文執筆開始から Web に掲載されるまでの流れとその中で感じたことを紹介します。

論文執筆者が誰なのか?、どの雑誌に投稿するのか?などは、ラボごと、研究者ごと、その時の状況ごとに千差万別だと思います。

ここでは、学位取り立ての半人前の筆頭著者目線での論文投稿の様子をご紹介しようと思います。

SciRevというサイトで自分が投稿する論文を検索すると、レビュー期間やレビューに対する筆者の感想などを見ることができます。

そちらも合わせて見ていただくと、自分が論文を出す時の参考になるのでは無いでしょうか?

背景

COVID-19 の影響で実験に必要なマテリアルが手に入り辛くなったのとある程度のデータが揃ってきたので、論文投稿を教授に提案しました。

そこで、以下の目標を設定しました。
・英文国際誌への論文掲載
・論文の執筆~アクセプトまでの期間: 10ヶ月 (300日)

そして、教授との相談の結果、自分の研究分野で歴史のある北米の某学会の専門誌 (IF: 4.2) にまずは挑戦することにしました。

論文が世に出るまでの流れのまとめ

結論から言うと、1回リジェクト、1回リバイスで論文がアクセプトとなり、論文を出すと決めた日を Day 0 として Day 249 に論文が Web に掲載されました。

詳細を、①論文投稿準備→②英文校正から論文投稿→③リジェクトからの再投稿→④リバイス実験→⑤アクセプトからの Web 掲載、の5つのパートに分けて紹介していきます。

論文が世に出るまでの流れの詳細

① Day 0 ~ Day 95 論文を書く

論文作成には以下のツールを用いました。

  1. 文章作成: Microsoft Word
  2. 引用文献: Mendley
  3. 画像処理: Adobe photoshop, Image J
  4. グラフ: Graph Pad Prism 7
  5. Figureの構成: Adobe illustrator
  6. 英文校正ツール: ProWritingAid premium

論文の本文作成の際は、 Science Research Writing For Non-Native Speakers Of English を参考にしました(私は、第1版を用いました。しかし、2020年3月に発売された第2版の方が最近の状況は反映した内容になっているようなので、読者の皆さんは第2版の購入を検討して見てはいかがでしょうか?)。

この本では、英語論文がどのように構成されているかが解説されており、ワーク形式で自分の論文もその通りに文章を作成していくことで、正しい順序で文章を構成することができます。そして何より役に立つのが、英語での言い回しの例文がたくさん記載されている点です。

共同研究者・教授との Figure や文章のディスカッションを行い、論文本文と Figure を完成させました。必要なデータをとりながらだったので、ここまでで 3ヶ月と案外時間がかかりました。

② Day 95 ~ Day 115 英文校正~論文投稿

論文が出来上がったら、英文校正に出します。ProWritingAid で文法上の誤りは最小限にしていますが、英文の構成、接続の関係性や単数複数の扱いなどをチェックしてもらわなければなりません。

1回目の校正で、「イントロダクションの前半部分から予想される内容とリザルトに記載されている内容が異なるので、読者は混乱するのではないか?」というご指摘をいただき、大幅修正を行いました。

英文校正会社とのやり取りを3往復して (英文校正に要した期間: 20日)、本文を完成させ、論文作成開始から 115 日目に北米の某学会の専門誌 (IF: 4.2) に論文を投稿しました。

チャレンジングな投稿だと考えていたので、次の投稿先の投稿規定に沿って Figure の体裁 (Figure 1A→Fig1a のような細かい変更) や本文 (引用文献の書き方) の変更を行い始めました。

③ Day 158 ~ Day 160 リジェクト~2回目の投稿

投稿してからはそわそわしてしまい、2 日に 1 回は tracking system (自分が投稿した論文が、今どのような状況なのかを見ることができるサイト) を確認していました。レビュワーによる査読が行われているようだったので、リバイスになるのではないかと思っていました。しかし…

結果は、投稿から 43 日後に 2 名のレビュワーのコメント付きでリジェクトになりました。

結構厳しめのコメントだったので、次に行くと決めていた雑誌に切り替えることにしました。

リジェクトの際にいただいたコメントを一部参考にして、論文を作り直し、リジェクトから2日後に、オープンアクセスの速報誌 (IF: 4) に論文を投稿しました (この時点で、論文作成開始日から 165 日)。

④ Day 178~ Day 222 メジャーリビジョンからアクセプト

速報誌という性質上なのかはわかりませんが、2週間で査読が返ってきて、

メジャーリビジョン (リバイス期間: 28 日間) という、結果でした!!

リバイスで要求された実験や修正内容の数は、
Reviewer #1
・Major revision: 2点
・Minor revision: 3点
Reviewer #2
・Major revision: 8点
・Minor revision: 4点
でした。

リバイスが返ってきてまず Excel でリバイスの内容を

  1. 実験が必要な内容 (手を動かす実験が必要なので、実験が律速になる)
  2. データの再解析 (実験は必要ないので、そこまで時間がかからない)
  3. 文章の修正・ディスカッション内容の追加 (文献調査が必要なので、文章作成が律速になる)

と、3 種類に分け、必要な時間を見積もりました。そして、時間のかかる実験もしくは結果によって方針が変わるものを優先的にリバイス実験を開始しました。

28 日間のリバイス期間が設定されましたが、教授のチェック・英文校正を考えると、20日間で本文と Figure を用意しなければいけませんでした。この期間は、他のテーマの実験と後輩指導と並行しながらだったので、大変でしたね。

変更箇所の英文校正をお願いし、レビュー結果が返ってきてから 23 日後にレビュワーからのコメントに対するレスポンスコメント、本文、Figure、追加実験により増えたサプリ Figure を再投稿しました。

そして、再投稿から21日後にアクセプトのメールが来ました!

論文作成から222日目でした。

⑤ Day 231 ~ Day 249 アクセプト後の修正とWeb掲載

アクセプト後は出版に向けての準備でした。Word で作成した本文や PDF の Figure が、論文のフォーマットでまとまったもの (校正刷またはゲラ刷) が到着し、italic 体にしたり、上付にしたりという修正を行い、再度雑誌社に送信しました。

そして、論文の作成開始してから、249日目に論文がWebに掲載されました

これにて終了になります!

学び

今回の学びは、

  • はじめの論文投稿の際は、データは全て出すわけではない 。核となるデータをはじめに出して、リバイスで要求されそうな突っ込みどころを用意しておく。
  • 今回の論文投稿では、論文の執筆~アクセプトまでの期間を 10 ヶ月と設定し、目標を達成することができました。若手のうちは着実に実績を積むことが重要だと思うので、しっかり期間を決めた上で投稿する論文を決める必要性があると思いました。
  • 論文執筆に時間がかかったり、レビュー結果が返ってこなかったりと、自分の想定より時間がかかるものだと思いました。しかし、雑誌社に論文がある時は自分ではどうしようもないので、自分ができる準備を先に行っておくことが重要だと感じました。

今回した紹介した論文投稿の様子は、ほんの一例でしかありませんが、これから論文投稿を行う方の参考になれば幸いです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました