研究室のミーティングやゼミ、学会発表後に、

質問はございませんでしょうか?

質問が思いつかない…。どうしよう…。
と、どんな質問をしたらいいのかわからない、という方もいるのではないでしょうか?
そこで、的確で優れた質問をするための技について解説していきたいと思います。
なぜ「質問力」が必要なのか?
あなたがどのような質問をするかによって、発表者や周りが「あなたがどのくらい理解できたのか?」を推し量ることができるからです。
優れた質問をすることができれば、
- 発表者は教えてあげたくなり、その発表者独自の考え方や情報を得ることができる。
- 周りの聴衆も「その視点良いね!」とあなたに一目置くようになる。
一方、どうでもいい質問をしてしまった場合、
- 「質問を言葉にできるほどには、考えられていない」と、あなたの能力を判断してしまう。
- あまり興味を持っていないんだなと判断してしまう。
と、悪い印象を与えてしまいます。
このように、「質問力」は自分の力を発揮する舞台を用意するために、まず必要とされる力になります。
また、優れた問いを立てることができなければ、優れた研究をすることはできません。
つまり、自分の研究を進める上でも、質問力は重要な能力になります。
まずは質問をする前の姿勢が大切
質問する前に、まずは聞く姿勢が重要になります。
- できるだけ前の席に座って、メモを取る。
- 自分の体全体を使って相手に応答する (うなずきや相づち)。
- 質問事項を複数用意し、最も重要 (だと考える) 質問を一つ選択する。
発表が終わってから、質問を考えていては、どうしても時間がかかってしまいます。そこで、話を聞いている時から、質問するぞ!という気持ちを持ちます。
優れた質問とは?
優れた質問とはなんなのか?下記の二つの書籍 (Amazon のレビュー件数が589件、5987件で共に星4つ以上 (2024年12月時点) の書籍) を参考にしながら、説明していきます。
「イシューからはじめよ」に関しては、累計58万部のロングセラーとなっており、2024年9月22日に改訂版が発売されています。
「本質的」かつ「具体的」軸で考える
本質的-非本質的を x 軸、具体的-抽象的を y 軸にとって、質問を考えることで優れた質問を考えることができます。 (Figure 1)。

- 本質的で具体的な第1象限の質問: いつ研究者になりたいと思ったのか?きっかけは何か? (自分が聞きたい内容が明確で、相手も回答しやすい。かつ、相手の内面を知る本質的な質問)
- 本質的だが、抽象的な第4象限の質問: あなたにとって研究者とは? (本質的であるものの、自分が聞きたい内容と相手が回答する内容に齟齬が生まれる可能性がある抽象的な質問)
- 具体的だが、非本質的な第2象限の質問: 休日は何をしてますか? (具体的で回答しやすいが、そんなこと聞いてどうするの?という質問)
- 非本質的で抽象的な第3象限の質問: ひねくれた人の変な質問
上記例からわかるように、本質的で具体的な質問 = 優れた質問であることがわかります。
このように、自分が考えた質問や他の聴衆がした質問を「本質的」軸と「具体的」軸に分類することで、質問の良し悪しを俯瞰してみることができます。
では、どうすれば「本質的」かつ「具体的」な質問を考えることができるのでしょうか?
本質的な質問とは?
ずばり
発表者もしくは質問者の置かれた局面で、次に答えを出す必要性が高い (と考えられる) 問題
ではないでしょうか。
具体的な発表を例にあげて考えてみましょう。例えば、「組織幹細胞において、DNA メチル化酵素 Protein X が組織の再生能に関与する」という発表があったとします。
その発表に対する本質的な質問はどんなものになるでしょうか?
発表者が幹細胞の移植で疾患を治療する目的がある場合
ヒト実用までに乗り越えないといけない問題が、次に答えを出す必要性が高い問題ではないでしょうか?
より具体的にいうと、ProteinXが高発現する再生能の高い細胞を分離するマーカーはあるのか?Protein X が再生能に寄与するメカニズム解析は十分か?などが考えられます。
このように、目的を達成するために必要な次につながる問題 = 本質的な質問だと考えられます。
具体的な質問にするためにはどうすればいいのか?
技1. Why の質問を When, Where, How, Who で考える
「組織幹細胞において、DNA メチル化酵素 Protein X が組織の再生能に関与する」という発表に対して、「なぜ Protein X が幹細胞の再生能に関与するのか?」という質問では抽象度が高すぎて、発表者も答え辛く、質問者が望んだ答えが得られる可能性も低いです。
そこで、Why の質問を When, Where, How, Who の質問にします。
(Why) なぜ Protein X が幹細胞の再生能に関与するのか?
- →(When) どんな時 (障害されたときなのか、胎生期なのか) に関与するのか?
- →(Where) どこ (炎症部位、幹細胞ニッチの内なのか、外なのか) で関与するのか?
- →(How) どのように他のタンパク質と相互作用して、再性能に関与するのか?
- →(Who) どんな患者さんに応用できるのか?
このように疑問詞を変えるだけで、あっという間に具体的な質問に変化します。
技2. 議論するレイヤー (層) を変えて考える
Figure 2 に示すようなマクロからミクロという視点で、議論するレイヤーを変更することで、質問が考えやすくなります。

細胞レベルのレイヤーでの「DNA メチル化酵素 Protein X が幹細胞の再生能に関与する」という結論に対して、質問を考えてみましょう。
ミクロなレイヤーで質問を考えてみると、
遺伝子レイヤー: DNA メチル化酵素 Protein X はどんな分子の発現を制御しているのか?
化学反応レイヤー: DNA メチル化酵素 Protein X は修飾する基質特異性をどのように決めているのか?
マクロなレイヤーで質問を考えてみると、
臓器レイヤー: Protein X は他の組織幹細胞でも重要な役割を果たしているのか?
ヒトレイヤー: ヒトの疾患においても Protein X が幹細胞の再生能に関与するのか?
ミクロ方向にレイヤーを進めれば、より詳細なメカニズムを知る質問ができます。一方、マクロ方向にレイヤーを進めれば、他の臓器やヒトへの応用可能なのかを知る質問をできます。
このように、議論するレイヤーをズラすことで、質問の幅が広がります。
最後は、勇気のみ!!
質問の方法が分かっても、「変な質問をしたらどうしよう…」「笑われたらどうしよう…」「本質的な質問ができなかったらどうしよう…」と思う気持ちもわかります。
しかし、そんなことは気にせずに、まずは質問してみましょう!
優れた質問をする>質問をする>>・・・>>質問をしない
のように、質問をすることと質問しないことには、埋めることができない溝があります。
少々質問が的外れであったとしても、質問する姿勢が賞賛に値します。
It’s better than nothing (何もないよりはマシだ) です!!
まとめ
「本質的軸」と「具体的軸」を基に、自分なりの質問を考えてみましょう。
あとは、自ら手を上げ、マイクの前に立つ行動力だけです。
その行動力が、あなたを強くし、研究者としての能力を高めるでしょう。
それでは、Let’s 質問!!
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