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ラボ配属された全学生に身につけてほしい『人に頼む技術』

研究力
こんな方に読んでほしい!
  • 頼み事が苦手な学生
  • 頼み方がわからない学生
  • 悩める学生
    悩める学生

    実験装置Aの使い方を知りたいんだけど、装置を普段使用している先輩のBさんに聞きたい。けど、忙しそうで、教えてくださいとは言い辛いな…。

    かだ
    かだ

    こんなことを思ったことはないでしょうか?私は何度も思いました…

    あなたや私だけでなく、多くの人が頼み事をすることを『苦痛である』と感じています。

    しかし、安心してください。
    本記事を読めば、頼み事ができる様になり、人の力を借りる事ができます

    本記事の結論

    • 助けを求めるときは相手のアイデンティティを肯定する
    • 相手に “あなたを助けることで、あなたは喜んでくれる” という確信を持ってもらう
    • お願い事をするときは、目的と所要時間を簡潔に説明する

    本記事では、「人に頼む技術 コロンビア大学の嫌な顔されずに人を動かす科学」を、バイオ系ポスドクだったKadaが、研究室に所属する学生に向けて紹介させていただきます。


    著者であるハイディ・グラント・ハルバーソン博士の紹介

    ハイディ・グラント・ハルバーソン博士 (Heidi Grant Halvorson, Ph.D.)

    • 目標達成やモチベーションに関する領域において、第一線で活躍する社会心理学者
    • TED Talk に出演し、300万 View という高視聴数
    • 目標達成に関する書籍を執筆するベストセラー作家

    本書を読むことで、

    • 人に頼み事をするハードルが低くなり、人に助けを求める事ができる。
    • 先輩の学びを得る事ができるので、研究が進む。

    というメリットが得られます。

    なぜ人は助けを求めることを怖がるのか?

    あなたは、人にお願い事をするとき、以下のような感情になったことはないでしょうか?

    1. 自分の能力が低くて、多かれ少なかれバカにされたりするかもしれないという不安
    2. 自分のリクエストに対してどのような返答があるかわからないという不確実な感覚
    3. お願い事に対する相手からの反応を受け入れる事ができるだろうかという不安
    4. お願いが拒絶されることで、これまでの関係性が壊れてしまうかもしれないという恐怖
    5. お願いに対して「ノー」と言われることに、不公平感を感じる。

    このように、お願い事をすることは、人間が感じうる5種類の社会的苦痛 (1. ステータスへの脅威, 2. 確実性のへの脅威, 3. 自律性への脅威, 4. 関係性への脅威, 5. 公平性への脅威) を全て伴うのです。

    お願い事をすることがこれほどまでに苦痛を感じるのであれば、「助けを求めるよりも、苦労して自分でなんとかしたほうがよっぽど楽だ!」と思ってしまう心境も納得です。

    なぜ頼み事をしても断られると思ってしまうのか?

    頼まれた側にとって、お願いがどれほど不便か、煩わしいかに意識を向けているからこそ、お願い事の成功見込みが薄いと考えます。

    しかし、頼まれる側の視点に立ったとき、頼まれた側が「ノー」と断るときの負荷を考慮しなければいけません。

    私たちは生まれながらにいい人でありたい、相手のお願いに応える親切な人でありたいと根源的には思っています。

    私たちが想像しているよりも遥かに多くの人たちが、他人に親切にしたいと思っているのです。

    自分が誰かから頼み事をされた時には、真剣に手助けしようとするにも関わらずです。

    人を助けることで、助けた側が幸福になる

    前提として、助けるという行為は、助けた側が幸せになるということです。

    人に頼るのが<br>苦手な学生
    人に頼るのが
    苦手な学生

    えっ!?お願いをすることで、相手は私のことを嫌いになりませんか?

    かだ
    かだ

    むしろやる気のある学生だと好意を抱きます。また、自分の知識が役立っていると感じる事ができるので、先輩も頼られると嬉しいです。

    では、何でもかんでも頼み事をすればいいのでしょうか?それは違います。

    人が助けを求められた時、しぶしぶ手を貸したり、全く助けようとしなかったりするのではなく、親身になって誰かを助けようとするのはどんな場合なのか?

    答えは、自らの意思で助けているという感覚を持ってもらう事です。

    助ける側の人が、”自らの意思で、あなたを助けている”という感覚を持つことが大切!!

    誰かに強いられたからではなく、自ら進んでなにかをすることを、心理学では「内発的に動機付けされた行動」と呼びます。内発的動機付けがあると、自分のしていることに強い関心を持ち、大きな喜びを感じます。

    お願いにおいても、相手自身が「助けたい!」と思ってもらい、助けてくれるようにしなければなりません。

    では、どうすればお願いした相手に内発的動機付けを持ってもらえるのでしょうか?

    その答えは、相手の自尊心を刺激することです。

    具体的にいうと、助けを求めるときは、相手をよく理解し、その人のアイデンティティを肯定的なものにする様なポイントを強調する事が大切です。

    例えば、Aさんはラボで一番フローサイトメーターの使用に詳しく、慣れているとします。その場合、Aさんに機器の仕様を教えてもらうことで、Aさんの『フロートサイメーターの使用に詳しいというアイデンティティ』を刺激することできます。

    お願いする相手でなければならない理由→「自ら助けたい!」という内発的動機付け

    どうすれば助けてもらえるのか?

    学生A
    学生A

    先輩は、私が困っているのに助けてくれない。見放されている…

    学生B
    学生B

    研究室には、たくさん人がいるのに誰も私を助けてくれない…

    と、思っておられる方もいらっしゃるのではないでしょうか?

    なぜそのような状況になるかを理解し、今までの思い込みを捨て、助けを求めましょう。

    具体的な助け方のメソッドをお伝えします。

    頼られる事が多かったので、頼まれる側からの視点を交え、その方法をお示しします。

    以下のような思い込みをしていないでしょうか?

    Q. 私が困っているのになんで先輩は気づいてくれないの?

    A. 助けを求めていることが他人に気づかれにくい理由は、“人前で恥をかきたくないという心理”が働くからです。

    例えば、装置の使い方で困っているように見える後輩を見ても、間違えて恥をかきたくないので「きっと自分で装置の使い方を理解しようとしているに違いない」「自力で解決しようと努力に水をさして、相手の成長を妨げてしまうかもしれない」と自分に言い聞かせます。

    “相手が困っていないのに、助けが必要だと誤解してしまう” ことのリスクと、”求められていないのに助けようとして嫌がられる” ことへの不安は、どちらも誰かを助けようとする側にとって、大きな障壁になります。

    逆に言えば、あなたが困っていて人に助けてもらいたいときは、この二つの壁を取り除くことが最善策になります。

    そして嬉しいことに、この方法はとても簡単です。

    そう、直接、相手に助けを求めればいいのです。

    とはいえ、助けを求めることに抵抗を覚える人もいるはずです。もし、こちらから何も言わなくても、助けてほしいという気持ちを相手が察知してくれるのであれば、私たちはみんなそれを望むでしょう。

    でも、残念ながら現実にはそうはいきません。

    他人は “助けを求める人は、それを伝えてくるはずだ” と考えているからです。

    このように、助けを受ける側の人も、人前で恥をかきたくないという心理が働くので、自ら助けに行くことを躊躇してしまうのです。

    あなたが「助けてもらいたい!」とはっきり伝えることで、相手はそのことに気づき、”あなたを助けることで、あなたは喜んでくれる”という確信を抱けるようになるのです。

    そうすれば自ずとあなたの頼み事に向き合ってくれる事でしょう。

    Q. たくさん人がいるのに助けないのはなんで?

    A. 助けられる立場の人が多すぎるので、自分が助けなくても大丈夫だろうと思うからです。

    困っているのに、誰も助けてくれない、と感じたことはないでしょうか?これは、多くの人がいるからこそ、助ける責任が分散してしまう事が原因です。

    責任の分散の状況は皆さんも良く経験があるのではないでしょうか?

    共通の試薬をみんなで使っているのにもかかわらず、なくなっている。自分じゃなくて、誰かが作ればいいだろう。誰かが備品を注文しているだろう。と責任を分散していないでしょうか?

    このように、不特定多数の人にお願いすることはお願い事において悪い手になります。

    サポートしてほしいからこそ、特定に人に 「あなたにこそ助けてほしい!」と伝えましょう。

    具体的な頼み事の方法

    ちょっとお時間よろしいですか?」のような曖昧な表現

    このお願いの仕方では、お願いをされる側も「ちょっとってどのくらいなんだろう…?予想以上に時間を取られてしまったらどうしよう…」というストレスを感じます。

    その結果、「とりあえずどれだけ時間がかかるかわからないものに対して、すぐにはOKとは言えない」と身構えてしまいます。

    B先輩、お願いがあります。遺伝子Xの発現を調べるために、装置Aの使い方を教えてて欲しいです。実験に必要な試薬の場所と装置の使い方の説明に20分ほどいただけないでしょうか?

    GOOD例にあるように、目的と所要時間を簡潔に説明する事が大切です。

    快く受け入れて「試薬の場所は実験室の4°C冷蔵庫で、装置の使い方はこの説明書を読めばわかるよ。説明書のp10,11を読んだ上で、話しかけて。そこから詳しく説明するよ。」と応えてくれるかもしれません。

    もしかしたら「装置Aの使い方は難しいから、20分で終わらないと思う。だから、僕の実験が終わった1時間後に教えてあげるよ。」という代案の提案があるかもしれません。

    ここでは、話す目的が”相談・共有・意思決定のいずれか”と”想定の所要時間”を、まず伝えてからスタートするという北野唯我さん手法を参考にしています。


    そして最後に、教えてもらったことに対して感謝をしましょう。

    データ取得後に、先輩に「データが無事取れました!」と、直接報告にいきましょう。

    グループミーティング発表する機会があれば、「Bさんにご指導いただき、装置Aを使用して〇〇の仮説を証明するデータを出す事ができました。」のように教えた側の影響がどのような結果に結びついたのかを、公にするする事が大切です。

    まとめ

    お願いことを成功させる技術について紹介しました。

    特にバイオ系の研究の場合は、装置の使い方やデータの解釈など、自分だけでは解決できない事が多々あります。

    餅は餅屋で詳しい人に聞く事が重要です。

    お願いする技術を身につけ、有意義なラボ生活をお送りください!

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