ここでは、研究をする上で有益だと思う書籍を3冊ご紹介します。
研究の考え方について知りたいときに読む
イシューからはじめよ 知的生産の「シンプルな本質」
サイエンスにもビジネスにも共通する、本当に優れた知的生産には共通の手法がある
安宅和人, イシューからはじめよ 知的生産の「シンプルな本質」, 英治出版, 2010, page 2
筆者の安宅和人さんは、東大の生物化学専攻修士卒→マッキンゼー・アンド・カンパニーで経営コンサルタント→イェール大学で神経科学の研究で Ph.D を取得→マッキンゼー→ヤフーという独特な経歴をお持ちの方です。
本書では、「どうやって答えを出すのか?」の前に「何に答えを出すべきなのか?」を徹底的に考え、ストーリーを作り出すことが大切だと述べています。
しかし、学部生や修士課程の学生さんの場合、「教員のテーマの一部を行うから、何に答えを出すかは決まっているよ」という方も多いと思います。そんな方にも本書を読んでいただきたい。
ここで質問です。
仮説の立て方を体系的かつ具体的に教わりましたか?
・正直、教員の先生の仮説を見よう見まねでやっています。
・論文からアイディアを得て自分なりに考えています。
本書では、仮説の立て方を研究・事業課題・日常の問題などを例に挙げながら説明をしています。
- 「スタンスをとる」ことが肝要 (48ページ)
- 通常のやり方ではイシューが見つからない場合 (87ページ)
- 数字が入ったイメージを作る (162ページ)
上記の内容を実践するだけでも、解像度の高い仮説を立て、研究を加速させることができます。
安宅さんの Hatena Blog に「イシューからはじめよ」のアウトラインに関して記載されているので、こちらのブログを見てから書籍を買うのもいいかもしれません。
採用基準 地頭より論理的思考力より大切なもの
本書を読む前、私自身のことを「自分はリーダー気質ではない。フォローする側だ」と思っていました。しかし、本書を読み、
- リーダーシップは、二人の会話の中でも必要である。
- 問題が起きたときに、自ら解決に向けた行動を取る人がリーダーシップがある人である。
など、リーダーシップは常に問われているし、日常的に発揮すべき機会があることを学びました。
現実に問題を解決するのは、問題解決スキルではなくリーダーシップなのです。
伊賀泰代, 採用基準 地頭より論理的思考力より大切なもの, ダイヤモンド社, 2012, page 65
この言葉には、ハッとさせられました。問題解決の方法がわかったところで、自らが先頭に立って実行に移さなければ、その解決方法はただの絵に描いた餅でしかありません。
実はマッキンゼーが求める人材は、今の日本社会が必要としている人材と全く同じです。まさか多くの人が、「これからの日本には地頭のよい人が必要だ」と考えているわけではないでしょう。同様にマッキンゼーも、地頭が良ければ採用したい、と考えているわけではないのです。
伊賀泰代, 採用基準 地頭より論理的思考力より大切なもの, ダイヤモンド社, 2012,前書き
「問題に対する解決策を組み立てる思考力」と「実際に問題解決を行うリーダーシップ」こそが終身雇用の崩壊やジョブ型雇用に移行する日本社会が求める能力だと言えます。
研究室に所属する間に身につける能力として、研究力や英語力などに加えて、特に博士課程の学生はリーダーシップという用件も付け加えてみてはいかがでしょうか?
研究に行き詰まって悩んでいるときに読む本
仕事は楽しいかね?
ユニクロを運営するファーストリテーリング会長の柳井正さんと京都大学 iPS 細胞研究所所長の山中伸弥先生の対談記事にて、山中先生が以下のようにおっしゃっていました。
僕は30代のころ、さまざまな壁にぶち当たって悩んでいました。そのときに出合ったのが『仕事は楽しいかね?』(デイル・ドーテン著)という本です。(中略) 成功するとか失敗するとかに関係なく、まず動く。そうしないと、次につながる何かは生まれないんです。
https://president.jp/articles/-/26475?page=2
細胞のリプログラミングに関する研究 (iPS 細胞の樹立) でノーベル賞を受賞した山中先生でも悩まれたこともあるんだと思い、本書を手に取りました。
本書は、発明家・起業家として巨万の富を築いた気さくなおじさんとサラーリンマン人生に愚痴をこぼす30代の男性が対話を通して、「成功したいんだけど、どうすればいいかわからない」という悩みを解く方法を教える内容になっています。
- 試して見ることには失敗はない (第3章)
- もし宇宙が信じられないような素晴らしいアイデアをくれるとして、きみはそれに相応しいかね? (第11章)
など、誰も答えを知らないことに対して挑戦する研究者にとっても心に刺さる内容を伝えてくれます。
まずはとにかく始めること。どのアイデアが最終的に実を結んで、どのアイデアが実を結ばないか、確かめる方法なんてないんだから。できるかぎりいろんなことをとにかくやってみること。そうすれば、そのアイデアがまた別のアイデアを引き寄せる。始めさえすれば、新しいアイデアのほうからきみのもとへ近づいて、飛びついてくるんだ
デイル・ドーテン, 仕事は楽しいかね? (Kindle 版), きこ書房, Kindle の位置No.1213-1216
研究においても、とにかく実験を始めてみることが大切!
新しい実験を始めるなんて、予算が限られているから難しいよ…
新しいことを試すために、いきなりウン万円の試薬を買おう!ではなく、今ある実験に組み合わせてできる実験はないかな?とスモールスケールで試していくことを試してはいかがでしょうか?
以前、指導教員に教えていただいたこととして、
「本実験の横で予備検討を仕込んでおく」
という考え方です。
細胞実験を例にとってみると、対照群を 3 well、実験群を 3 well の本実験を行う。それに加えて1~2 well 分を別の実験に使ってみてはいかがでしょうか?手間はそこまで増えないですが、時間は大幅に削減が可能です。これは時間的にも心理的にもハードルが低いので、皆さんも是非試してみてはいかがでしょうか?
ちなみに、本書はAmazon Prime 会員なら、Kindle 版が無料で読むことができます。Kindle アプリを PC にダウンロードすれば、Kindle がなくても読むことができるので、この機会に Amazon Prime 会員になってはいかがでしょうか?
まとめ
読書は、今まで自分が知らなかった視点を与えてくれます。
筆者がこれまでの人生で身につけてきた考え方を、1000~2000円で触れることができるので、読書は非常にコストパフォーマンスに優れた投資だと私は思います。
皆さんも、本を読んで自分の視野を広げてみてはいかがでしょうか?
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